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Profile

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田中愛子

AIKO TANAKA

大阪樟蔭女子大学 元教授

内閣府「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」SDGsのためのフードスタディーズ研究会 発起人幹事

Planetary Food Education Network代表

AIKO TANAKA CULINARY SCHOOL 主宰

Japan food activist協会代表

Gusto Labo International Japan代表

BIOGRAFY

経歴

1949

大阪生まれ

1972

​大阪樟蔭女子大学 学芸学部英米文学科(現国際英語学科)卒業。

1981

料理家・吉岡昭子氏のもとで日本伝統の家庭料理の基礎を学ぶ。

1986

アメリカ・ニューヨーク五番街に夫が開業した日本食レストラン「SHINWA」の経営に携わる。多数のセレブリティが顧客として訪れる。その傍ら、現地でのパーティー、ケータリング、日本料理講習などを手掛ける。

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1991

オーストラリア タスマニア州のリゾート開発事業を州政府と協同でコーディネート。そのプロジェクトを通じて、オーガニックと環境保全について学ぶ。

1995

ニューヨークの「Peter Kump Cooking School」にて本格的に料理を学ぶ。

1997

帰国後、料理家として活動を開始。NHK「きょうの料理」に出演。

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1999

食を多角的にプロデュースする会社「キッチンカンバセーション」設立。

2001

『おいしい!たのしい!グッド・ギャザリング』(文化出版局)を出版。雑誌、新聞などのメディアで活躍。

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2004

『Aiko Tanakaクリナリースクール』の前身である『リスタ クリナリースクール』を設立。日本初の「料理研究家養成コース」「ケータリングプランナー養成コース」などにおいて人材育成に力を注ぐ。

2009

ニューヨーク大学で「フードスタディーズ」の講義に触れ、感銘を受けたことをきっかけに食育活動を開始。「次世代のこどもたちや地球環境のために今できること」をテーマに『食卓の上のフィロソフィー』の理念を掲げる。その理念に基づき「食育ハーブガーデン協会」を設立。ハーブを植え、育て、収穫して料理に取り入れることを推奨。現在、日本国内の150余の企業、各種施設、学校などから支持され、授業にも取り入れられている。

2011

樟蔭高等学校健康栄養コースに教育アドバイザーとして就任し、高等学校教育におけるフードスタディを体系化し、定着させる。

2012

日本ハラール協会との協力による「ハラール和食」推進活動を行う。

2013

マレーシア・クアラルンプールにて開催されたMIHAS(マレーシア国際ハラール食品博)において、ハラール認証を受けた食品メーカーの食材を使って日本料理のデモンストレーションを実施。現地の大臣の来訪を受け、各国メディアからも取材を受ける。

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2014

大阪樟蔭女子大学学芸学部ライフプランニング学科に日本で初めてとなるフードスタディコースの開設にあたり、教授として着任。

2015

日本料理国際化協会を設立。全日本調理技能士会と日本ハラール協会とのコラボレーションにより「ハラール調理師認定資格」の設立に携わる。

2018

米・伊『グストラボインターナショナル』との提携により、世界各国からの留学生を迎えてのサマーセミナーを実施。大阪をフィールドに、日本の食文化教育プログラムを実践した。(2019年も実施)

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2020

内閣府「地方創生SDGs産学連携プラットフォーム」分科会『SDGsのためのフードスタディーズ研究会』の発足に尽力。観光庁外部専門人材に就任等、食のアカデミックな分野へと活動の場を広げた。

SOCIETY ACTIVITIES

学会活動

2016

AFSA学会  ピッツバーグ大学

2017

AFSA学会  トロント大学 「日本料理とはなにか」講演

2018

KITA学会 「UMAMIワークショップ」

Commonground学会 ブリティッシュコロンビア大学(ヴァンクーヴァー)「日本料理とは何か」講演

Food Writing Symposium  ニュウスクール大学(ニューヨーク)

2019

KITA学会  ソルボンヌ大学 「Food Studies of Osaka」講演

AFSA学会  アンカレッジ 「DASHI ワークショップ」

Commonground学会  高雄大学(台湾) 「なぜ出汁が生まれたか」講演

2020

「フードフォーフューチャー シンポジウム」2020 オックスフォード大学 (Online)「実生の柚子」講演

AAS-in-Asia 学会 in 神戸 (Online) 「KOBE Culinary Melting Pot」基調講演

Commonground学会 マリーマウント大学 (Online)「日本の山間部に暮らす知恵発酵と昆虫」講演

BOOK

著書

「おいしい!楽しい!グッドギャザリング」(文化出版局)

「食卓の上のフィロソフィー」(旭屋出版)

「Food Study of Osaka」(英語版・co:mokuten)

「圧力鍋料理―すぐにできる美味しい」誠文堂新光社 /2009年7月25日

「トマト美人のごちそうメニュー」主婦と生活社/2003年7月20日

「すてきな和食Gathering―ようこそ我が家へ」旭屋出版MOOK/2002年12月

「きれいに暮らす~圧力鍋で作る心とからだにやさしいメニュー~」文化出版局/2001年11月25日

「おいしいお茶のひと時を…」旭屋出版MOOK/2004年1月15日

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STORY

田中愛子の歩んできた道

SECTION

01

−私の人生を変えた「家庭料理」とその歴史−

家庭料理を通して持続可能な地球の未来を見つめる

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めまぐるしく変化する社会に、そして世界に、「これからの時代を、どう生きていこう?」と、誰もが一度は考えるはず。1995年、私はニューヨークの料理学校「Peter Kump’s CookingSchool」(現I.C.E Institute of Culinary Education)で本格的なアメリカの家庭料理を勉強しました。そのきっかけとなったのは、日本がバブル景気真っ只中の1986年、主人が五番街で日本食レストランを経営していたことからです。主人に伴い私もニューヨークに頻繁に訪れては、店の経営の傍ら現地のユニークで個性あふれる食を体験するにつれ、本場のアメリカの家庭料理をプロから習ってみたくなったのです。

私がなぜ“アメリカの家庭料理”と強調したかというと、それこそがアメリカの食文化の歴史であり源流だからです。今ではアメリカというとハンバーガーやフライドチキンのファーストフードのイメージがありますが、そうしたファーストフードが登場する以前のアメリカは家庭料理が食の中心にありました。

アメリカの歴史は15世紀にコロンブスがアメリカ大陸を発見したことに始まりますが、実際にヨーロッパから大陸への移民が盛んになったのは17世紀ごろと言われています。かつて日本でも放映されていた「大草原の小さな家」のドラマのように、彼らは広大な荒野の中に一軒の家を建て、土地を耕し、家畜を飼い、大自然の恵みを受けながら家族で慎ましく暮らしていました。現在のように大都市や飲食店もなく、食料や燃料を手に入れることすら困難だった時代、「食べる」ということはそのまま命を繋ぐことであり、そのほとんどが家庭料理によるものだったことは容易に想像できるでしょう。

その後、ヨーロッパだけでなくアフリカ、中南米、アジアなど多種多様な民族が流入し、発展を遂げる途上においても、栄養不足などによる健康問題は解決されないままでした。そんな中、1896年に社会学者でのちに料理学校の校長にもなったファニー・ファーマーが出版した「The Boston Cooking-School Cook Book」という世界で初めての家庭料理のレシピ本が空前のヒットとなり、多くの人々に健康的でおいしい家庭料理を手軽に、効率よく作る手法を提供しました。その中でも彼女の一番の功績と言われているのが、カップとスプーンによる簡易な計量法を一般に広めたことです。レシピの手順や分量、計量法が安定したことで、おいしい料理が作れる確率は格段にアップしたのです。

日本の大学でも研究されている「家政学」という学問は、この時代のアメリカがルーツです。家政学では、ヨーロッパで職人や料理人、執事といった人々に支えられてきた衣食住の家事の営みを、いかにして家族で効率的にこなし、健康的な生活ができるか、というノウハウが緻密に研究されています。

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SECTION

02

時代に流されず、
本当に必要なものだけを選び取る感性を養う「新家庭料理学」

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時は流れて1950年代以降、世界No.1の大国になったアメリカは黄金期を迎え、豊かになった人々はシステムキッチンの整った一戸建ての家に住まうことがステータスになりました。家庭の主婦は素敵なキッチンで手軽に作れるオーブン料理や手作りのパン、スイーツに夢中になり、それぞれの民族が持ち込んだ祖国の味をアメリカの食材を用いてフュージョンさせた独自のレシピが続々と誕生します。

続く1960 ~70年代にはファーストフードや電子レンジ料理も登場し、大量生産のより安価で簡易な料理を好む傾向が生まれました。しかしその一方で、多くの国民がベトナム戦争や環境破壊問題などに直面したことにより、人々は地球の未来を憂い、自分自身の考えで自由に生き方を決めることの大切さ、自然を守ることの意義に目覚めていきます。自然回帰、オーガニック、健康、自分らしさといった視点から食生活や文化を見直そうという「ヒッピー・ムーブメント」が社会全体に沸き起こり、それが現代のヘルシーフード志向や「フードスタディ」という学問の源流へとつながっていきました。
私が「Peter Kump’s Cooking School」で学んだ多くの料理も、そんな食の歴史と文化の延長線上にあり、手軽で合理的でありながらも、健康と環境を意識したレシピがとても新鮮に感じられました。

私はアメリカで体感したこれらのムーブメントをぜひ日本にも紹介したいと思い、2009年、地域の子どもたちに向けて食育活動を行う「ハーブガーデン協会」の活動をスタート。そして2011年には母校である樟蔭高等学校で、私が食育活動の理念としている「食卓の上のフィロソフィー」を実践する「フードスタディコース」を開設することになりました。さらに2015年には、大阪樟蔭女子大学学芸学部ライフプランニング学科にもフードスタディコースが誕生し、高校・大学一貫でフードスタディを学べる環境が整いました。
フードスタディコースでは、様々な講義や調理などの実習を通して、学生たちに日々何気なく食べている料理や食材が一体どこからやってきて、どうやって作られたかに注目し、私たちの身体にとって、社会にとって本当に必要な食を選び抜く目を養うことを目指しています。現代社会では安くておいしいもの、珍しくて美しい食べ物があふれ、家庭料理の魅力が薄れつつあります。 その一方で、日本の伝統的な食文化やライフスタイルは世界から注目されています。そんな今こそ、もう一度「日本の家庭料理の力」を見直すべき時ではないでしょうか。

私はこうした海外の体験とともに、自身が生まれ育った大阪の伝統的な家庭料理を融合した、「新家庭料理学」という新しい概念を提案。現代社会のライフスタイルにマッチして効率良く作れ、健康的でおいしく、見た目にも洗練された新時代の家庭料理を提案していきたいと考えています。健康的で豊かな食によって健やかな人はつくられ、健やかな人によって健全な社会や環境が創造されます。家庭料理の力を取り戻すことこそが、「幸せの生活革命」につながると私は信じています。

2015年、国連は『我々の世界を変革する: 持続可能な開発のための2030アジェンダ』と題する具体的行動指針を発表しました。「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」を略してSDGsと呼ばれるこれらのアジェンダは、人類が地球上で末長く、幸福に暮らしていくための持続可能な開発指針として世界規模での参加と協力が求められています。その中には貧困や飢餓をなくすこと、自然環境を守ること、質の高い教育を全ての子どもたちに届けることなど17の目標が掲げられています。私たちが研究課題とする、食と家庭と社会の関係性もまた、このSDGsと深く関係しています。自ら作ることで、食の本質と大切さを知り、それをまた次の世代へと繋いでいって欲しい。そんな想いを込めて、常に皆さんとともに学んでいきたいと考えています。

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